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92歳 日本にもの申す 生きる物語・硬骨のドン・キホーテ

 福島菊次郎さん
2013・11・6 毎日新聞から
 
 「世の中、ウソだらけなのね。このま
ま、みんなで知らんぷりを続けちょった
ら、また同じ過ちを繰り返してしまう」
 山が色づき始めた山口県柳井市。花街
のたたずまいを残す旧市街地の古びたア
パートで、福島菊次郎さん(92)が憤る。
 男二人で語り明かした4日間。話題は、
福島原発から写真家としての出発点とな
った被爆地・広島の記憶に転じ、特定秘
密保護法案や憲法改正の動きに及んだ。
「胃と前立腺はがんにやられ、目と耳と
足腰は期限切れ」と言うものの、反骨精
神は衰えを知らなかった。
 1921(大正10)年、同県下松市の
小さな漁村の網元の四男に生まれた。今
では希少となった「社会派の報道写真家」
の先達である。その風貌もさることなが
ら、一徹なる生きざまは、立ちはだかる
巨大な風車に、やり一本で挑んでいった
ドン・キホーテをほうふつとさせる。
 被爆者、安保、東大紛争、三里塚、水俣……。
戦後史を彩る現場に常に身を置き、カメラを「武
器」に「権力のうそ」を暴き続けた。駆り立てた
のは、「忠君愛国」の名のもとに人々を死に追い
やった皇国への怒りと、それを妄信してきたこと
への自責の念だ。
 時代は経済成長期へと突き進み、報道写真の需
要も激減した。「モノと金に浮かれる国と人々」に
絶望し、東京から瀬戸内の海を望む故郷の山口に
戻ったのは82年。61歳で、自給自足の隠とん生活を
志した。
 一度は表舞台から退いた福島さんが、90歳の誕
生月を迎えた2011年3月の東日本大震災を機
に再び腰を上げた。同年秋、福島原発周辺の被災地
に入り確信する。「国民の命と大地を
奪ったのに、誰も責任を取ろうとし
ない。なれ合いの日本社会に、一石
を投じたい」。カメラをワープロに替
え、老眼鏡を2枚重ねで思いを記す。
 年金も受け取らずに、愛犬ロクと
暮らす。「お上にあらがう以上、世
話にはならん」。92歳のジャーナリ
ストの気概である。(萩尾信也)
            =つづく
by kenagena38 | 2013-11-08 00:26
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